2014年9月2日火曜日

クルーグマン@『週刊現代』

おじさん週刊誌の『週刊現代』に,クルーグマンのインタビュー記事が掲載された(2014年9月13日号, pp.42-45).インタビュアーは大野和基氏.『そして日本経済が世界の希望になる』でもインタビューと翻訳をやっていた人だ.有料だけど,ウェブ版もある.(追記:その後,「現代ビジネス」にも無料で読めるバージョンが掲載されている.)



インタビュー内容を4つの論点にわけてツイッターでつぶやいたことを,こっちにも載せておく.


論点 (1) 消費増税:これについては完全に失敗,「自己破壊的な政策」と語ってる.対策は,「増税した消費税を一時的にカットすることです.つまり,安倍総理が増税したことは気の迷いだったと一笑に付して,元の税率に戻せばいいだけです」(p.43)

いちおう補足しておくと,安倍政権が消費増増税を検討していた頃から,クルーグマンは消費税増税をやめておくべきと言っていた.引用しよう:
でも、この短期の成功は、自己破滅的なおわりを迎えたりしないだろうか? 『フィナンシャルタイムズ』に最近のった論説にでてくるこの問いは、ぼくもホントに心配してる:「日本経済は、第二四半期に当初の報道よりも大幅に急速なペースで拡大した。それにともなって、安倍晋三首相が異論多数の消費増税を敢行する確率が上昇している――もっとも、この増税はさらなる政府支出によって相殺されるという話だが」
 いいかな、もしかすると、日本はこの増税を受けてもなお、経済成長を維持できるかもしれない。でも、できないかもしれない。経済成長が確実に定着するまで待てばいいじゃないの。とりわけ、デフレ予想ががっちりと〔プラスの〕インフレ予想に転換するまで待てばいいじゃないの。
 ぼくに言わせれば、消費税増税を延期するのは、純粋に財政の観点から見ても賢明な判断だ。日本でゼロ下限とデフレが組みあわさって生じた深刻な帰結の1つは、日本の実質金利が最近まで他の先進国よりも大幅に高くなってしまっていたことだ――これまでに積み重なった債務がすっごく大きいときには、深刻な懸念事項だよ。実質金利を下げるのは(そして、かなりの部分まで、既存の債務の実質価値を下げてやるのは)、長期的な財政の見通しにとって大いにものをいう。財政責任の名の下に、この前線で事態の進捗を危機にさらそうってのは、おろかでしかない。(「ポール・クルーグマン、日本への緊急提言」,経済学101;英語原文は2013年の9月19日付け配信.)

論点 (2) マクロ経済政策:「加えて,財政面,金融面での追加的な刺激策もとるべきでしょう」(p.43).安倍政権は,ここ数ヶ月の政策が間違いだったと認めて,元の路線に戻ることを宣言すべきとのこと.まあね.

で,黒田日銀は「『日本経済が復活するためには日銀はどんな手でも打つ』という決意を,繰り返し,繰り返し表明」すべき (p.43).

論点 (3) 主要貿易相手国の状況:日本の「三大貿易相手国」米国・中国・韓国のうち,安定しているのは韓国経済.ただし,教育のために家計が「著しく大きい」借金を抱えているという特徴がある (p.44).米国はイエレン体制FRBの早期切り上げが心配.

で,主要貿易相手国では最後の中国がいちばん問題.「余剰労働人員が枯渇する中で,投資が持続不可能なレベルに達しています.消費者需要も非常に弱く,少なくともGDPの20%は消費に再分配されなければならないのに,どうしたらそれができるのかを誰もわかっていません」(p.44)

「現在の中国の経済は'80年代の日本よりもっと極端な投資バブル状況にあり,金融危機が生じる可能性が非常に高い.実際,中国では企業も地方自治体もすでに返済能力を超えた債務を抱えています.そのため,最悪の場合,これ以上の貸付は継続できないという状態に陥る危険性があります」(p.44)

で,これが次の論点につながる――

論点 (4) 中国による戦争のリスク先日メモをとった話と大筋同じ.

中国経済が低迷すれば,中国の指導層に「次のロシア」になる誘因が生まれてしまう.ここで訳者の大野氏は慎重にもとの英語を併記して発言を紹介している――
引用:「中国の指導者が支持率を気にするのであれば,今後は Pick a fight over some islands in the Pacific(太平洋の島々にちょっかいを出す)のではないでしょうか.国民を再結集させるために,太平洋地域で小さな戦争を作り出そうとするわけです」
「中国の指導者はそんな本格的な戦争は望んでいないでしょうが」としつつも(p.44),もしも日中戦争が起きた場合のダメージは「超破壊的」になるだろうとクルーグマンは言う.なぜなら,日中ともに輸出依存のシステムで,互いに市場であり調達先だからだ.

――だいたいそんなインタビュー内容.くわしくはみんなもぼくと同じように恥をしのんで『週刊現代』9/13号を買うといいです.なんかエロ動画の案内とかいやらしいグラビアとかが載ってるぞ!

0 件のコメント:

コメントを投稿