2017年12月31日日曜日

「お前だったのか、VAIO P の子孫は…」

むかしむかし、おしりのポケットにむりやり突っ込めなくもないようなでもやっぱり無理な感じの VAIO P という可愛らしい PC があったのじゃ。

スイと鞄に放り込みやすい小型筐体に変則的な横長8インチディスプレイを搭載、ちっちゃいけれどぽちぽちとタッチタイピングしながらけっこうな長文入力もできて、でも Atom CPU は絶望的なまでに非力で、しかもバッテリーが2時間ていどしか持続してくれないという、ハマるユーザーにはハマるけどそうでもない人には「どうすんだこのお高い産廃」っていうマシンじゃった……


で、ぼくはまさにこの VAIO P がずきゅんとハマった方の人間だった(第1世代はVAIO type P という名前だったけどぼくが愛用してた第2世代機は “type” がとれてただの VAIO P って名前だった)。なにしろ小さい。ほぼどこででも気軽に鞄から取り出してぽちぽちタイピングをはじめられる VAIO P は、じつに優秀な「モバイル端末」だった。さすがにまだ USB 充電できる小型PCはなかったはずだけど、VAIO P は ACアダプタもけっこう小さくて、本体とアダプタと予備バッテリー(そう、当時はバッテリー交換できる PC がまだまだ多かったのだ)、この3つワンセットでもすばらしく軽量コンパクトに荷物がまとまって感動モノだった。

VAIO P の登場から7年ほど経って、いまや文書入力に十分なキーボードを備えた Windows PC なんて、絶滅危惧種になっている。たしかに GPD Pocket みたいな端末もかろうじて販売されているけれど……ちがうんじゃ、わしが求めているキーボードは「無理すればなんとかタッチタイピングできなくもない」ようなやつじゃなくって、横幅がじゅうぶんに確保されてて1時間でも2時間でもタイプしていられるような、そういうキーボードなんじゃ…

そんな風に小型 PC 冬の時代をなげいていたところ、つい先日、はたと気づいた――「あれ、こいつの使用感ってかつての VAIO P そっくりじゃん!」

「こいつ」とは、iPad pro(9.7インチ)のことだ。

いまこの駄文を iPad pro の純正キーボードで打っていても、押し下げの浅い「ぽちぽち」感もけっこう似ているし、横幅なんて 240mm でぴったり同じだったりする。電車の座席でも「ひょい」と取り出せるお手軽さも似てるし、ハイスペックな Windows ノート PC ほどなんでもかんでもサクサクこなせるわけではないけどスキマ的な作業ならちまちまやれるといういかにもサブマシンらしい立ち位置も似てる。

しかも、2010年の VAIO P よりはるかによくなっている箇所もあれこれある。各種レビューでさんざんいわれている特色はいまさらここで言うまでもない。アップルペンシルがどうとか言う以前に、VAIO P のどうしようもなかった欠点が、いまでは iPad のみならずたいていの端末でとっくに解決されていることにあらためて感動を覚える:なにより、バッテリーが長時間もつ。しかも、モバイルバッテリーや USB充電器から手軽に充電できて、専用アダプタは必要ない。お高い純正の予備バッテリーですら2時間ちょっとしか動作時間を伸ばせなかったのに、ごく安価で良質なそのへんのモバイルバッテリーであっさりと充電問題が解決してしまえる。LTE 対応で、wifi 頼みにならずにネット接続ができてしまう(しかも格安 SIM を手軽に運用できるようになっている)。

そうか、お前があの VAIO P の系譜を継ぐ者だったのか…

とはいえ相変わらずおしりポケットには入らないけど、そこはまあ、どうでもいいです。

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